2014年12月2日火曜日

ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所で体験する「マイブレンド体験」





ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所でブレンド体験をした。
初めてのブレンド体験は、かなり前になるが、サントリー山崎蒸溜所にてだった。
テーマは、「目の前に並ぶ数種(何種類か忘れた)のモルト原酒をブレンドして、“響”と同じ香味を作りなさい」というもの。まずは同社最高峰のブレンデッドウイスキー“響”の香りと味をみて自分なりに分析し、モルト原酒のサンプルを自分流にブレンドするのだ。
おもしろかったなぁ。
難しかった。
いや、難しすぎた。
たしか、ピート香の強い原酒を入れ過ぎて、エレガントさにかけたものができちゃったと記憶する。
今回はそこんところを気を付けて…と。



宮城峡蒸溜所 マイブレンド教室」。蒸溜所見学後に体験させていただいた。
先生は(株)仙台ニッカサービス営業部長岡島君夫さん。宮城峡蒸溜所の生き字引でもある。先生の指示に従い始める。





まずは、5種の原酒サンプルの個性を把握する。
F「フルーティ&リッチ」(宮城峡モルト)
      ・・・フルーツのように華やかでバランスがよく後味に苦味。
S「シェリー&スィート」(余市モルト)
      ・・・チョコレートのように甘く香ばしい、アフターはスッキリ。
P「ピーティ&ソルティ」(余市モルト)
      ・・・ヨード香。味は意外におとなしい。ドライで骨太。
M「モルティ&ソフト」(宮城峡モルト)
      ・・・爽やか、酸っぱい。ドライで意外に骨太、コク。
G「ウッディ&メロウ」(比較的癖のない連続式蒸留したカフェグレーン@宮城峡)
      ・・・マイルドで甘い香り。優しい味わい。





続いて、標準のブレンディングを体験する。

たとえば「スタンダード その1」の比率は、
F 2.0
S 0.5
P 0.5
M 1.0
G 6.0
これは華やかな香味。

「スタンダード その2」は、
F 1.0
S 0.5
P 0.5
M 2.0
G 6.0
これは穏やか。

「リッチ」は、
F 3.0
S 1.0
P 2.0
M
 1.0
G
 3.0
これはピート香、ヨード香が強く、個性的。

「ライト」は、
F 1.5
S 0.5
P  0
M 1.0
G 7.0
軽快で最も癖がない。

微妙だけどブレンド後はかなり違っておもしろい。
こうしてそれぞれの個性を見ると、「カフェグレーン」が思いのほかしっかりとした香りと味があり美味しいことに驚く。「カフェ グレーン」は、連続式蒸留器で蒸留するグレーンウイスキー。「カフェ式」(カフェとはこの蒸留機を発明した人の名前)で造られるグレーンは、単なる癖のな いピュアアルコールではない。いわば古い形式の連続式蒸留機ゆえに原料の個性が適度に残るのだ。それが微妙な深みや奥行きを醸し出してくれる。これはニッ カウヰスキーにしかない蒸留機だ。つまり、ニッカウヰスキーはグレーン割合の多い比較的お手頃な商品も原料風味の生きた味わいを持つといえるのだ。





さて、友田ブレンドはどうしたか。
比率を変えながら4種の試作後に決めたのはコレだ。
F 2.0
S 3.0
P 0.5
M 1.0
G 3.5
ポイントは「シェリー&スィート」の割合を高くし、甘く香ばしい風味にしたこと。ピート香はほんの隠し味程度。これはサントリー響作りの時に学んだ。
フルーティさと滑らかさとエレガントさを兼ね合わせたブレンド割合とした(つもり)。




集中してやっとります!


 

自分流のブレンド割合で200ml瓶に詰めたら、今度はオリジナルの名前をつける。
私は、瓶のギリギリ一杯まで、さらにはグラスのギリギリ一杯まで注いで飲みたいから、「つるつるいっぱい」とした。これは福井の方言で「液体を表面張力するまで器にめいっぱい注いだ状態」をさす。「つるつる」はニッカウヰスキー創始者竹鶴政孝にちなみ「鶴々」とした。
この日ブレンド体験したのは7名。
きっとそれぞれにかなり香味が違うはず。味比べが楽しみだ。
こういう体験をするたびに、ウイスキーのブレンダーの仕事がいかに繊細かつ大胆で集中力がいる奥の深いものかということを実感する。そして、作品となった市販のウイスキーを感動と感謝をもって楽しめるようになる。
 


この日の参加者全員の「作品」。近いうち飲み比べ会をする! 楽しみだ。



この宮城峡蒸溜所のマイブレンド体験、ただ今大人気につき受け入れ態勢が間に合わずお休み中。次回の開催まで少々お待ちくださいね。

















ニッカウヰスキー、仙台、宮城峡蒸溜所を訪ねる(オマケ:仙台限定ウイスキー「伊達」が飲める店紹介)





NHK連続テレビ小説「マッサン」が人気だ。
個人的にはニッカウヰスキーは昔から好きだったし(特にスーパーニッカ)、竹鶴政孝氏の養子である竹鶴威氏とは銀座ロータリークラブなどを介して少しお付き合いをさせていただいた。今の仕事であるトータル飲料コンサルタントとしてウイスキーの仕事もあるゆえ一応は勉強もしている(つもり)。数年前には余市蒸溜所にも取材に行った。
「マッサン」は、そんな背景からとても楽しみにしていたし、録画もしている。ウイスキーを飲みながら録画を見るのが最近の楽しみなのだ。

そんななか、ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所の見学に行けることになった。
なんでも、ウイスキー人気とマッサン人気で、通常の何倍もの見学者が訪れているとか。
冷たい雨がそぼ降る仙台駅におりたった。
この日ご案内いただくのはニッカウヰスキーの生き字引(株)仙台ニッカサービス営業部長岡島君夫氏。ご自身もこの人気に驚かれているとか。

JR仙台駅前より作並温泉行き(市営バス)「ニッカ橋」下車 (所要時間:約60分)がでている。


まずは見学受付へ。大変な混雑。



傘を差しつつ説明くださる岡島部長。うしろは新川。「にっかわ」と呼ぶ。ニッカと似た名前であることに不思議な縁を感じたうえに、非常に硬度の低いウイスキーつくりには最適の水質であることがわかると、竹鶴政孝は、「余市がハイランドとするなら、ここはローランドタイプになる」と感じ、ここに第2の蒸溜所を造ることを決めた。余市はピートのきいた骨太な個性に対し、宮城峡はスマートで穏やか、果実の風味のある軽快な個性を持つ。余市が「海の蒸溜所」ならばここは「森の蒸溜所」。一年を通じて霧や靄や雪が蒸溜所を包む。深い森林から生まれる湿潤で澄んだ空気が貯蔵庫の樽を乾燥から守り、豊かな香りを生み出すのだ。


ゲストホールには展示物も。
これはスコットランドの外国人移住登録証。注目すべきはリタも「外国人」とされている点。このときにすでに日本人として政孝とともに生きていたことがわかる。


かの「竹鶴ノート」。スコッチウイスキーつくりに関して、細かい文字で丁寧に書かれている。これがジャパニーズウイスキーの原点なのだと思うとちょっと震える。


かなり小ぶり。これを鼻にかざして香りを嗅ぐ政孝の姿が想像できる。



キルン搭。大麦麦芽をピートで燻して乾燥させる場所。現在は使われていないがウイスキー蒸溜所のアイコンでもある。


カフェ式連続蒸留機(の模型)。トウモロコシを主原料とするグレーンウイスキーを生み出す蒸留機。現物はキルン等の横にある。もちろん見れない。1830年イギリスにてエニアス・カフェ氏によって発明された。カフェは人の名前。通常グレーンウイスキーはその蒸留機が新しければ新しいほど、雑味のないピュアなアルコールを抽出するのだが、この蒸留機は古いこともあり、独特の個性を持つグレーンウイスキーになる。これが、いわゆる、宮城峡の、いやニッカウヰスキーの味わいとなるのだ。お手頃なブレンデッドウイスキーでもおいしいのはこのカフェ式蒸留機のおかげだと言える。


これはピート(泥炭)。これがウイスキーの個性を決定する。


ここからは一般見学でも見ることができるコース。麦芽を糖化するタンク。 糖度13%くらいになる。いわゆる麦ジュースだ。









麦芽と水を混ぜて発酵させるタンク。 3日間かけアルコール7~8%になる。ビールみたいなものだ。


ここが見学必須の単式蒸溜器(ポットスチル)の蒸溜棟内。 比較的低温で蒸留することでまろやかな味わいになる。モルトウイスキーは2回蒸留する。また、ネックの形や曲がり具合などでも味が変わってくる。蒸留器に「注連縄」が飾られているのは余市も同じ。



製樽棟。ニッカでは樽の作り替えも行っている。内部を焼くところを見ることができる。すごい炎で迫力満点。ガンガンに焼いても表面のほんの少ししか焼きが入らないのだとか。この焼き具合で熟成ウイスキーの風味が変わる。


貯蔵庫。地面は土のままだ。ここでウイスキーは森の空気と湿度に守られ熟成していく。神秘的な光景。このあとはゲストホールへ。試飲ができる。



蒸溜所での試飲のあとは仙台の街に繰り出そう。仙台限定の「ニッカウヰスキー 伊達」を堪能するのだ。
まずは、並木が美しい定禅寺通りに面した眺めのいいお店。一人でもグループでも楽しめるカウンターとボックス席。親しみやすいスタッフは旅人にもうれしい。
12月に行われている「SENDAI光のページェント」を眺めながら飲む「伊達」は格別だ。

バーラウンジ欅



こちらはオーセンティックなカウンターバー。大人が楽しめる店だ。とはいえ、親切なスタッフとの会話も弾み、仙台の夜を安心して楽しませてくれる。ニッカウヰスキーの飲み比べも楽しい。

バー ザ・ヴォイス


仙台駅。新幹線改札内にある「さくっと立ち飲み 伊達や」 。やるなぁ、仙台。ここでも「伊達」が飲める! 素敵♪ 新幹線に乗り込む前に店名通りさくっとやってこ!




さて、ドラマ「マッサン」も中盤に入り、鴨井大将とマッサンのウイスキーつくりが始まってきた。このタイミングで、本当のウイスキーつくりはどんなものかを、宮城峡や余市、そのほかサントリー山崎や同じく白州、マルスなどの実際に行ける蒸溜所を訪ね、見学し、自分の目で確かめるのも乙なものだ。
ますますジャパニーズウイスキーがおいしくなってきた。
ジャパニーズウイスキー、万歳!

















2014年12月1日月曜日

The Hong Kong International Wine & Spirits Fair 2014 Report



今年で7回目となる香港インターナショナルワイン&スピリッツフェア2014年
民主化デモの影響で開催が心配されたが、今年初参加となるベラルーシ、コロンビア、マケドニア共和国などを含む38か国の国と地域から1000を超える出展者、また80の国と地域から2万人のバイヤー・一般客を迎え、過去最大の開催となった。

なにせ、香港は、酒類の輸入関税ゼロという大きな魅力を有しているし、バックには巨大な消費地中国本土をかかえる酒類輸出入の重要なハブだ。そのうえ本土はワインブーム到来というタイミング。
フェアに注目が集まらないはずがない。





会場は、香港島、香港コンベンション&エキジビジョンセンター。
期間は、2014年11月6日(木)から8日(土)。最初の二日間は業界関係者、最終日は一般のワイン&スピリッツファンも参加できる。比較的お手頃に購入できるとあって、すさまじい数の来場者を迎える会場の熱気は最高潮。



まずは中国本土のワインブースから。
私もしっかりテイスティング。5月の北京行き以来、本土のワインの質の向上に驚き続けている。ここでも中国産のワインが大注目の様子だ。
今はカベルネやメルロー主体のいわばボルドー・レシピのワインが多い。期待するのは「中国らしい個性」。

注目のグレイス・ヴィンヤードについてはこちら。





ポルトガル。ポルトガル領だったマカオの影響でポルトガルワインは比較的身近な存在だ。昔香港で古い古いポートワインをたくさん飲んだ覚えがある。最近の注目は赤のスティル。


距離的に近いオーストラリアの輸入量も莫大で、新大陸のなかではダントツナンバー1。


続いて人気がニュージーランド。



今回初参加のマケドニア共和国。主たる赤ワイン品種が「ヴラネック」。野趣あふれるタンニンが印象的な比較的濃厚赤ワイン。中国料理には結構いけるかも。





フランスやイタリア、ドイツなど伝統国のブースは大きい。とくにフランス。中国・香港に賭けてますっという勢いを感じる。とくに格付けボルドーやロマネコンティなど高額商品のPRが目につく。




地元香港の輸入会社があつまるブースは最大級。ここでも高級ワイン・高級スピリッツに興味を持つバイヤーで盛り上がる。交渉の目はみな真剣だ。

中国スピリッツブースではこんな華やかな民族衣装でお客様を迎えする。



クールなカクテルバーや大人の雰囲気のウイスキー&ブランデーブースでも各種セミナーが行われた。今や世界的なウイスキーブーム。世界中からの専門家や、若者や女性の姿も多く見られた。

 



そして日本ブース。ワインよりも日本酒勢の参加が多い。日本酒専門の展示会ではないが、日本酒に興味を持つ業界関係者が引きも切らず押しかける。
日本に本拠地を置く(株)海淋堂は、熟成酒「達磨正宗」の販売を行う。特に今回は唐辛子入りの「激辛天国」が評判のようだった。




一日目の夜はガラディナーパーティー。料理もゴージャス。プレゼン付き。



また、3日間とも各所でさまざまなセミナーが開催される。

人気のメドックワイン・テイスティングセミナー。


スコッチウイスキーの真実を知る!セミナー。


中国本土のワイン市場と現状について。







中国のインターネットによるワイン購入は毎年倍々の速度で伸びている。さらに驚くべきはその宅配システム。今やあの広い中国全土にほぼ1日で届けられる宅配網が完成されているとか。ワインの内訳は、66%が赤ワイン、23%が白ワイン、8%がスパークリング、25%ロゼワイン。全体の6割がフランスワイン。2割弱がイタリアとスペインが占めている。


中国人講師による日本酒セミナー。きき酒師の資格を持つミッキー・チャン氏。


地図の位置がちょっとずれているのもご愛嬌♪
しかしこういうこと、日本で世界のワインを語るときに、私たち日本人も知らず知らずに犯しているミスだと思う。気をつけねば。

日本できき酒師の資格を取りました!というチャン氏。まるで葡萄畑にいるみたいに写っちゃった♪



格付けボルドーテイスティングセミナー。




香港ソムリエ協会主催によるアジア・オセアニア・ソムリエ・フォーラム。アジアの若手ソムリエはいかに向上すべきかについて。日本ソムリエ協会からもパネルに参加。お一人は香港にて勤務される野坂昭彦ソムリエ。先日行われた第7回全日本最優秀ソムリエコンクールで見事2位に輝いた人。日本人として世界で頑張っていただきたい。
香港ソムリエ協会会長はとてもチャーミングで、ちょっと田崎真也氏に似ている♪
ちなみに中国語でソムリエは「侍酒師」と書く。酒サムライみたいだな。


一般の方にもお役立ていただけそうなセミナーが、
「プロが伝授する!中国料理のソースと合わせるワインの法則セミナー」だ。ぜひ見てくださいね!







そのほか、このフェアでの新しい&おもしろい情報は随時あげていきます。
ワインファンもプロのソムリエも見逃せない情報、ありましたよ!
お楽しみに。