2018年11月18日日曜日

「香港インターナショナルワイン&スピリッツフェア2018」リポート



開会式

エントランス

ジャパン・パヴィリオンは連日大人気

世界のワイン・スピリッツ市場の良質なハブ、香港


11回目となる『香港インターナショナル・ワイン&スピリッツ・フェア』(香港貿易発展局主催)が、118日(木)~10日(土)、香港コンベンション&エキシビション・センターにて開催された。会場には33の国・地域から1075社が出展、約70のイベントやセミナー、試飲会で大変な盛り上がりをみせた。

2008年、香港政府がワインのすべての輸入関税と行政管理を撤廃したことにより、香港におけるワインの輸入額は2007年の16億香港ドルから2017年には120香港ドルへと約7倍に増加した。ユーロモニターの調査によるとアジアと中国本土のワインの需要は引き続き強く、2017年~2022年のアジアにおけるワイン売上額は毎年6.7%増加する見込みとしている。空と海の交通の利便性と優良な保管施設を備えた自由貿易地として、香港はもっとも費用対効果の高いワイン流通ハブとして世界的に認知されている。


フランスは最大エリア



多彩な講師陣による数々のセミナー


日本ワイン、強豪インドや中国との市場競争も視野に

今回のフェアでも、世界のワイン取引業者、なかでもフランスをはじめとするクラシックなワイン生産国、輸送面でメリットの大きいワイン新興国オーストラリア、また最も新しい国インドも、香港と香港を窓口とした中国本土へビジネスを拡大する出発点として香港ハブを強く支持している様子がうかがえる。
ちなみに、香港のワイン輸出額は28.7億香港ドル(37千万米ドル)。ワインの輸入額は914,000万香港ドル(117,000万米ドル)。つまり輸入した3分の1が再輸出されている計算になる。香港の先にある中国メインランドという巨大なマーケットがちらりと見えてくる。
世界視点からすれば超新興国とみられる日本ワインは、サントリーワイン、シャトー・メルシャンをはじめ、長野から塩尻ワイン協会(塩尻市産業振興事業部産業政策課)北海道から北海道ワインらがJETROJFOODOの協力により出展した。日本酒とともに、和食には日本産ワインという傾向が徐々に始まりつつある。人気とともに日本産ワインの需要が伸びることを期待したいが、世界の壁はまだまだ高い印象だ。しかし、香港インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション」にて「シャトー・メルシャン マリコ・ヴィンヤードロゼ 2016」、「同 長野シャルドネ 2015」がフードマッチング部門で金賞およびベストワイントロフィーを獲得(関連記事はこちら)品質の良さは確実に世界市場で認められ始めている。
また、ワイン造りに恵まれた気候と土地を持つ中国産ワインの強烈な勢いがある。競争規模の大きいワイン市場。品質向上目まぐるしく日本政府の後押しもある日本産ワインの生きる道を明確にする時期だ。


目立つ中国産ワイン
  
ジャパン・パヴィリオンでのセレモニー

日本産ワインも精力的に出展

こちらは日本産の豚肉!

日本清酒文化交流會ブース

熊本ブース

新潟ブース

香港では、清酒の「量より質化」が明確に


貿易統計によると、2017年の清酒の輸出数量は23,500kl で前年比19.0%増。輸出金額は187億円で20%増。数量・金額ともに8年連続で過去最高を更新する、絶好調の波に乗っている。
輸出相手国・地域としては、1位アメリカ合衆国、2位大韓民国、3位中国人人共和国、4位台湾、5位香港。フェア開催地である香港の2017年輸出数量は1877klと前年96%とダウンだが、輸出金額ベースでは1位のアメリカに次ぐ2位で約28億円の取引高を記録した。量より質に変化してきているとみていいだろう。
フェアには、新潟県酒造組合、岐阜県、熊本商工会議所が出展。現地取引がすでにある、栃木県産酒、福島県産酒、愛知県産酒、山形県産酒なども現地業者ブースから多数出展(日本清酒文化交流會など)。  
JAPAN PAVILLIONで行われたオープニングセレモニーでは、フェア主催の香港貿易発展局より、ベンジャミン・チャウ上席副総裁、マーガレット・フォン事務局長、さらには、松田邦紀在香港日本国大使兼総領事が参列。チャウ氏、フォン氏ともに、最終日には個人的に日本酒や梅酒を購入する予定と日本産酒のファンであることを表明してくれた。
日本ブースでは、BtoBBtoCのお客様が連日訪れ大盛況だったが、中国本土には、今だ新潟、福島など東日本産酒類の輸入が規制されている。東北をはじめとした東日本には、まさに世界の通が欲しがる銘酒が揃っており、規制解除の話も見え隠れしてはいるが、輸出側も輸入側もどうにも歯痒い思いが募る状況である。今のところは、規制のない香港が窓口となり、その先にある巨大な市場への参入を見据え準備を整えるべきだろう。

ウイスキーセミナー

ウイスキーセミナー

アイスバーでもスピリッツセミナーが人気

シェリーと中国料理のペアリングセミナー

久米仙酒造の琉球ウイスキー

笹の川酒造のジャパニーズウイスキー「山桜」


あらたなクラフト・ジャパニーズ・ウイスキーの登場


また、焼酎をはじめとした蒸留酒、とくにジャパニーズ・ウイスキーの出展がかなり注目を浴びていた。そもそも日本の大手メーカーのウイスキーがここ10数年、世界中から脚光を浴び、ストックの少なさからネット価格が異常な数値をはじき出し、売りたくても売るものがないという想定外の状況を呈している。
先にも記したが、2017年度の日本酒の輸出金額は187億円(前年比120%増)だが、ウイスキーは136億円(前年比126%増)。たぶん今年度か来年度には日本酒を追い越すとみられている。
それを受け、大手メーカーや新設の蒸留所、さらには焼酎蔵、蒸留設備を持つ清酒蔵も、独自のウイスキー、さらには同じく盛会的注目を集め始めているジンの製造し始めている。
注目株は、福島県郡山市の笹の川酒造「ブレンデッドウイスキー 山桜」だ。香港中心地の人気和食店やフュージョン料理店ではすでにオンリストされ、店のオリジナルウイスキーの製造も請け負い始めている。
さらには、琉球泡盛からは沖縄産ウイスキー「鯨 KUJIRA Aged20year/久米仙酒造」が地元業者から出展。香港でのみの取り扱いとのことだが、なめらかで樽熟成からくる深く香ばしい味わいが好印象。べーつが泡盛というオリエンタルな雰囲気もいい。いずれ逆輸入されるのではないだろうか。
そのほか、ジャパニーズ・クラフト・ジンの展示も多く、ますます期待値が高くなっている。


ミッキー・チャン氏の日本酒セミナー

セミナーでの飲み比べ

ガラディナー


食中酒=Shochuではなく、プレミアム・ジャパニーズ・スピリッツとしての提案

ジャパニーズ・ウイスキー、ジャパニーズ・ボタニカル・クラフトジンの人気からも想像できるように、これからは日本産蒸留酒へと市場の興味はシフトしていくのだはないだろうか。清酒の後を追いかけてきた焼酎だが、「アルコール25度の食中の酒=Shochu」というスタンスではなく、アルコール40度のジャパニーズ・スピリッツとしての提案を考えるべきだろう。麦ベースの蒸留酒は世界中が慣れているし、日本産の米の蒸留酒なら、希少性もありプレミアム価値も高い。なにせ、世界のスピリッツ市場はアメリカのみで134億円。世界で30兆円。その0.1%を取ったとしても300億円だ。ちなみにアメリカ・アジアを制しているSoju(韓国焼酎)は、日本レストランでの展開が多いそうだ。スピリッツならバー・シーンを狙うことも考えるべきだろう。実際、今回のフェアでのスピリッツセミナーやイベント、ブースの人気はことのほか盛り上がっていたし、ソムリエよりも世界のバーテンダーたちの活躍が格段に目立っていたのも今を表しているようにみえた。



参加の国&地域
オーストラリア、ブルガリア、カナダ、チリ、中国、チェコ共和国、フランス、ドイツ、ギリシャ、香港、インド、インドネシア、イタリア、日本、韓国、モーリシャス、メキシコ、モルドバ、ニュージーランド(初参加)、ノルウェー(初参加)、ペルー(初参加)、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スウェーデン(初参加)、スイス(初参加)、台湾、タイ、イギリス、米国


岐阜県から渡辺酒造

栃木県から島崎酒造

栃木の片山酒造は「原酒のみ」で勝負

和歌山から「而今」の平和酒造









0 件のコメント: